キャノネット  1961年製
     
諸元
レンズ   
 シャッター 
: 『キャノンSE』  45m/m f1.9 4 群6枚構成
: 『コパルSV』 B,1~1/500

このカメラが発売されたとき、カメラ業界全体が大ショックを受けたのではないだろうか。 その当時カメラの販売価格は f2.8付きで¥16000.-~¥18000.-、f2.0~f1.8付きで¥23000.-~¥30000.-位が通り相場だった。  性能面から云えば露出調整は追針式が主流だった。  そんなところへ f1.9付きで ¥19800.-で売り出された。
私はその当時、高級機しか造っていなかった「天下のキャノン」が安っぽいカメラを売り出したものだな!と思っていた。 だがしかし、自動露出は出来るは 手動も出来るは そして又、露出に過、不足が有ればシャッターは切れないしで全然別次元のカメラが出現したような感じがしたものだ。  
 
 『にっくきキャノネット』

 発売されてからのお客さんの反応はすごかった。当店もすぐに問屋に注文したのだが『いつ入荷するか判らない』との返事ばかりでさっぱり品物が入ってこない。我々のような地方小都市の小さな小売店へは一切廻ってこなかった。無理に注文するとそのたびに人気のないカメラと抱き合わせで買わされたりして在庫ばかりが増えていく。 いずれそれらのカメラも売れるのだけれどもキャノネットが売れるたびに損しているような気分になって『このキャノネットめ』と思いながら売っていたように思う。   お客さんの要望には応えなくてはならないし、つらかったつらかった!
又、キャノネットで撮ってこられたフィルムを現像してみれば、そのネガには露出の過不足など一切なく非常に綺麗にそろっている、従って写真を焼くときの時間や手間が相当省けた。 今でこそ露出がそろっているのは当たり前の事だがその当時は「カン」で露出を決めていた時代なのだからキレイに揃ったネガなんて考えられなかった。   感心したり腹立ったりで今から思えば「驚きの連続」と言ったところか!

   『すごい内部構造』
最も気になったのは「機械の中はどんな構造になっているのか?」と言う事だっ
たのだが、新品を分解するわけにも行かず「どうせあの値段なんだから手抜き
できるところはうまく手を抜いて造ってあるのだるう」と思ってあきらめていた。
幸いにして(お客さんにとっては不幸な事だが)約6ヶ月ぐらいして水没品の修
理依頼があった。他の修理をほっといてキャノネットを最優先で分解に取りか
かった。     驚いた!  驚いた!   そのオート機構の複雑な事そして
シャッターやファインダーへの連結機構のすばらしい事、手抜きどころか他のカ
メラの何十倍もすごいと感じた。  「キャノネット」に対する私の思いや感覚が1
80度どころか2回転も3回転もするくらい変わってしまった。 全くもって『キャノ
ネット様々』と云った感じにされてしまった。
人気が有りすぎて『キャノネット専用』の工場が造られて生産されていたと聞い
たことがある。 このカメラが当店にも潤沢に入り出したのは一年半か二年くら
いしてからのように思う。 このころには他のメーカーのオートカメラもキャノネッ
トに追いついてきた様な気がする。 個人的な意見だがこのカメラは『レンズシ
ャッターカメラ』の歴史を変えたカメラの一つではないかと思う。


上から見れば基本的な構造だが、レンズやミラーなど少し大きめで見やすい。 初期キャノネットのファインダーも2種類ある、上の写真はその正面で左の方が新しくフレーム内にシボリ数値が表示されるタイプで右は五角形の矢印がでるタイプ、下は裏側でほんの少しだけ違う構造をしている。


このフレームは最初期のもので露出の過不足に応じて五角形の矢印がでる。その矢印の示す方向へシボリ又はシャッターリングを回し「五角」が消えれば適正露出が得られたことになる。 今にして思えばとてもユニークで幼稚なことだが何せ50年前のことだから『ホー』と思って関心をしたことがあった。  この手のキャノネットは今でもあまり見かけないように思う。
ファインダーもそうだがシャッターやシボリリング、シャッターハウジングなどにもいろいろと改良されていて、下の6枚の
写真を見て頂ければ判るが2台同時に分解してみると改めてこの社の姿勢を教えられたような気がしてならない。

シャッターリング、下は前期、上は後期

ASAの表示(リングの下)

シボリリング、右は前期、左は後期

シャッターハウジング、内部は変わらない

     前期        後期

速度変換パネル、左は前期、右は後期

このセレン光電池に関しても、私の在庫品
の中には劣化したものが一つもない。セレ
ンの性能も非常に良くなったからかも知れ
ないがとにかく強い。

この部分だけでも部品が8個、ガッチリと組
まれている。右の写真を見て判るとおりレン
ズが奥に付いているので、傷も付きにくい。

集光レンズを取り付けると、口径は大きい
のだがレンズが小さく見える。1.9が付いて
いるのだが 2.8 みたいな感じに見える。
キャノネットも何種類も造られ、とても人気の高いカメラでが、なんと云ってもやはり初期キャノネットはデザインはスッキリとして洗練された感じがあり『元祖キャノネット』の風格があると思う。



トップへ
トップへ
戻る
戻る




FC2 Analyzer